文化講演会

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文化講演会

 




 10月25日(水)の午後、文化講演会が行われた。これは昭和51年から続く本校の伝統行事であり、斯界の第一人者のお話が聞けるまたとないチャンスである。 今年は日本文学界の重鎮で文化勲章の受章者でもある、中西進先生にお越しいただき「万葉集の魅力」という題でご講演を賜った。先生は88歳というお年をまったく感じさせない張りのあるお声で、熱意をこめて万葉集の魅力を語って下さった。 
 わたつみの 豊旗雲(とよはたぐも)に 入り日射し 今夜(こよい)の月夜(つくよ) さやけかりこそ 天智天皇 あな醜く 賢(さか)しらをすと 酒飲まぬ 人をよく見ば 猿にかも似る 大伴旅人 あらたしき 年の始(はじめ)の 初春(はつはる)の 今日降る雪の いや重(し)け吉事(よごと) 大伴家持万葉集4500首のなかから「これだけは」と先生がお選びになったのがこの3首である。この3首を全員で朗唱。 
 例えば2首目の「あな醜く」の歌は首をひねる人が多いかもしれない。しかし、この歌が「醜い」といっているのは「酒を飲まない」ことではない。「賢しら」をすることである。「賢しら」。それは自分をよく見せようとか格好をつけようとかとり繕って、ありのままの自分を出さないことであり、その姿勢を万葉人は最も醜いとしたのである。つまり「直き心・まことのこころ」の欠如である。万葉集はこの直き心を訴える歌集なのだ。という先生の説明によって、思わず膝を打つ、そんな時間が流れていった。 
 本校生徒も先生の質問によく答えた。例えば、「さやけかり」とはどんな万葉仮名を当てているでしょうか?という質問に勇敢に手を挙げた1年生の女子。「清い明るいという字です。」という答えに先生はとてもお喜びになり、「私の本を後日贈りましょう」とまでおっしゃった。あるいは「人間的な、あまりに人間的な」とは誰の言葉でしょう?という質問に、今度は3年生の男子が「ニーチェです!」と答えた。この二人には数日して立派なご著書が送られてきたという。 「人間的な、あまりに人間的な」とはニーチェが西洋文明の批判として用いた言葉であるが、先生はこの言葉を用いて『万葉集』が追い求めているものは、まさに「人間的な」自然な感情であり、生き方であると話を締めくくられた。 


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